2017年1月13日金曜日

全てを貫く「違法な職務質問」という恐怖

 行政書士試験はその年の4月現在での法律・判例から出題されます。
 つまり、現時点(1月)に出された判例等は出題されます。

 実は先日注目の判決が1個出されました。
 内容としては行政法のジャンルで「国家賠償訴訟」に関してなので、ブログではまだまだ先なのですが、タイムリーな新判決は紹介しておきたいので、敢えて書きます。

1 兵庫県警察職務質問訴訟

【簡単な内容】
 男性Aはレンタルビデオ店駐車場に停車中、警察官に職務質問を受けた。
 その際免許証の提示、車内検索等に素直に応じたが、カバンの中には大人用玩具が入っていたため恥ずかしくて開示を拒否。

 すると警察官に囲まれ、最終的には開示させられたため、開示は強制的であり、精神的苦痛を受けたとして訴訟を提起。


【判例】
 男性に異常な行動はなく、免許も提示していた。
 罪を疑わせる具体的な事情はなかった。
 これらのことから、職務質問を続ける必要性、緊急性を欠き、プライバシー侵害の高い行為として、警察官の所持品検査は違法な行為と認め、県に3万円の賠償を命じた。


2 国家賠償法を提起できるケース

国家賠償訴訟の要件等は国家賠償の時に細かくやりますが、国家賠償は公務員の【違法な公権力の行使】によって損害を受けた場合に提起できます。

 つまり、「何でもかんでも職務質問してきてムカつく!」とか「職質のせいで仕事に遅れた!」ってだけでは提起できません。

 後者のように損害を受けても、職質が適法なら提起できませんので。

 今回はその職質が違法だって認められた裁判です。
 この何が凄いのか?もう少し見ていきます。


3 職務質問の法的根拠

※ 簡略的に書いています。
【警察法第二条】  警察は、生命、身体、財産の保護に任じ、公共の安全と秩序の維持に当ることを責務とする。

この責務・目的を果たすための手段として

【警察官職務執行法第二条】  警察官は、合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問することができる。

 
 この警察官職務執行法の【合理的判断】とは、警察官の経験に基づく主観で良いとされています。
 そのため、警察官が怪しいと思えば、それだけで適法とされてきました。
 
 しかし、今回はこの部分にメスが入った形の判決となったわけです。
 厳密には職質したこと自体ではなく、職質に付随する所持品検査ですが、警察官が怪しいと思って開示させたことが違法とされていますので、同じことです。
 

<勘違いしてはいけない部分>

 この判決は結果だけを見ないで下さい。
 つまり、何でもかんでも「大人の玩具等、見られたらプライバシーの侵害になる所持品検査を違法としているわけではない」と言うことです。

 この事案でのそれまでの態度、対応内容、場所、時間、嫌疑の内容等々を総合的に判断した上で、【この事案では】その開示が違法であるとしているだけです。

 それでも、この判決によって「性的な物が入っている」と拒否できる余地が出来たと言う部分がとても大きい意味を持っているんです。

 これによって本当に性的な物を持っている人にとっては良い結果でしょうし、所持品検査を逃れたい違法な物を持っている人にとっても有利な結果に成り得る余地が出来たと思います。
 
 

4 職務質問の任意

 行政書士試験には関係ありませんが、多くの人が疑問を持っていることなので、私の見解を載せておきます。
 
 職務質問の任意は、【自分のタイミング、自分の意思で答えることが出来る】と言う趣旨の任意です。
 
 職務質問に応じるかどうかを選択できるって意味の任意ではありません。
 
 

<有形力の行使>

 これはもっと簡単に言うと「実力行使して良いのか?」ってことです。
 これは軽度ならオッケーと判例があります。
 その根拠も条文の【停止させて】にあります。
 
 停止させることは認められているので、拒否されて、逃げようとする者を【停止させる】ことが可能です。
 そのため、肩を持ったり、腕を掴んだり、自転車を持ったり、進路を塞いだりは必要な行為とされています。
 
 

<犯罪予防>

 先程も言いましたが、職質は犯罪を犯そうとしている疑いのある者も対象です。
 しかも、その疑いの判断は警察官の主観です。
 それは警察法の警察官としての目的を果たすための行為です。
 
 

<まとめ>

 職務質問は、実力を行使してでも、停止させることができ、その目的は警察官としての責務を果たすため、公共の福祉を守るためのものである。
 
 このことから、職務質問の任意は職務質問を受けるかどうかの任意ではないことは一目瞭然です。
 
 私のブログを読んでいる貴方ならわかりますよね?
 憲法で保障している【人権は公共の福祉のためには侵害される権利】だと。
 
 
 
 行政書士試験を受験する人も、そうじゃない人も頭の片隅に入れておいて良い判例だと思いますので、急遽記事を書きました。
 
 
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