2017年1月22日日曜日

その発想はなかった!新しい法学とは?

 こんにちは。
「生活の役に立つ!」とか、「何かあった時のために!」と法律を学びたいと考える人が多くなってきています。

 そこで実際に勉強を始めるとします。
 しかし、法学無学者は最初から壁にぶつかります。

 それは
「法学を学びたいけれど、何をどう勉強して良いかわからない」
です。

 そのような人は、具体的に民法とか、刑法とか学ぶ前に、法律用語とか、法学独特の考え方等の基礎となる部分をまずは学びたいんだと思います。

 そこで今回は、「法学ってそもそもどんな学問なの?」から、その部分に触れたいと思います。


1 法学とはどんな学問?

多くの人はこのように思っていませんか?

◎ 法律・条文を覚える学問
◎ 裁判例を覚える学問
のように暗記の学問だと。

 これは「ノー!」
 つまり法学は暗記の学問ではありません。

 法学は解釈の学問です。
 言葉を様々に解釈し、自分なりの解釈を作り上げる学問です。

 そのため、自分で作り上げるクリエイティブな学問と言えます。


 法律の条文や判例の暗記は、その様々な解釈をするために必要な基礎知識です。
 使い方としては、自分の作りだした考え方の根拠、他者に説明する時の説得力として肉付けする根拠という位置付けです。

 そのため、【条文や判例の知識が少ない初心者が考える解釈】【条文や判例の知識が多い弁護士が考える解釈】とでは、弁護士が考える解釈の方が説得力がありますし、根拠の厚みが違いますよね。


2 狩野英孝さんの17歳との淫行疑惑報道を例に

この事案は成人が17歳とのわいせつ行為をしたって事案です。

 この事案については、法律を学んだことのある人の中でも意見が割れます。


 【未成年者との淫行を理解するための7項目】 
 私はこちらの記事で、罪に問われ得ると考えを書いています。

 一方で、ある弁護士さんは【法律上処罰される可能性はほぼゼロ】との見解を見せています。


 これは実は法学上はどちらも正しいんです。
 何故か?
 先程「法学とは?」で言いましたよね。

 法学はあくまでも解釈をする学問なんだと。
 様々な解釈をして、自分なりの解釈を作り上げる学問なんだと。

 だから、このどちらの解釈も、根拠を持った解釈なので、法学的に間違いではないんです。

 実際問題としては、白黒つけなければいけないので、そこは裁判って形で決めることになるんですけどね。

 今回は関係ありませんが、これに白黒をつけるのが裁判(司法)です。

 本来はどちらも正しいことに対して、「こっちが正しい。こっちが間違っている」と決められる司法権限の強さが分かりますよね。


3 実際に自分なりの解釈をしてみよう

法学的な解釈をするのに、とても良い事例がありますので、是非貴方なりの解釈を導き出してみて下さい。

<事例>

 A男とB女は結婚をしましたが、子供が出来ません。
 そのため、体外受精を決めました。

 そこで、病院で施術が行われ、見事受精に成功しました!
 その受精卵をまだ病院で保管している間に、病院に泥棒が入り、受精卵を盗んでいきました。

 さて、この犯罪は何罪になるでしょうか?



 この事例は一見簡単そうなのですが、具体的に考えていくとかなり難しいことに気付くと思います。

 貴方は最初に
「窃盗罪じゃないの?」
と考えるかもしれません。

 ではその根拠は何でしょうか?
 窃盗罪と考える場合の解釈例を見ていきましょう。

<窃盗罪と解釈する場合>

【刑法235条】他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とする。

 この条文を見て何か引っかかる部分はありますか?
 そうです。
 窃盗が成立するためには盗まれた物が【財物】じゃなければならないんです。
 つまり【物】ってことです。

 ここで根底が覆りますね?
 「受精卵って物なの?」と。

 さあどうですか?
 窃盗と考えた貴方の根拠を今出す時です。

受精卵が物と解釈すると
◎ 受精卵を売買出来ることになります。
◎ 受精卵を質屋に預けてお金を借りることもできるようになります。 

 それでも受精卵を物と考えますか?

 今ここで思い浮かぶ「受精卵は物である」と説明する根拠の厚みが、今の貴方の法学的な知識量です。


 「物じゃないかも!!!」
と思ってしまったなら、貴方の解釈はまだ弱い解釈なのかもしれません。

 しかし、実は物じゃないと考えても問題が出てきます。


<受精卵は物じゃないと解釈する場合>

受精卵が物じゃないと解釈するなら、「受精卵は生き物(人間)だ!」と捉えることになると思います。
 法的には動物は物ですので、物じゃない生き物と言うことは人間ってことになります。

 と言うことは、人間が連れ去られたわけですから略取・誘拐罪になります。
 それならシックリきますか?

 ではここでもお聞きします。
「受精卵が人間であると解釈する根拠は何ですか?」


 受精卵が人間であると解釈すると
◎ 受精卵が相続権等の様々な権利を持つことになります。

 つまり、金持ちの受精卵を大量に作ったり、盗むことで相続権を持った者が沢山いることになります。
 受精卵を保管(扶養)している者は養親になる可能性もあります。

 更に、受精卵が盗まれていなくても病院で死んでしまった場合、病院は業務上過失致死罪、又は状況によっては殺人罪に問われることになります。

 これはこれで、とても大きな不具合だと思いませんか?


<現在の落としどころ>

困りましたね。
 このように実際問題として法学的に考えても解決しない問題が生じます。
 先日の狩野さんの問題の解釈も同じようなものですね。

 この問題について現時点では「どちらと決めない」って感じの解釈が有力です。
 「司法判断をする場合は受精卵の窃盗は無罪にしましょう!」って感じのようです。


 つまり、受精卵は財物でも、人でもないってことですね。


 ここにまだ法律の未発達・未熟な部分が露見しましたね。
 このような未発達な部分が見つかると、特別法が制定され、明確にするというプロセスを踏むわけです。

 だから、解釈によって色々と作り上げていく学問なんですよね。


4 法学無学者にまず読んでほしい本

どうでしたか?
 受精卵が盗まれる事例は楽しんでもらえましたか?
 それとも、「詰まらない」と感じましたか?

 楽しさを持った貴方は法学が向いているかもしれません。
 そのような貴方に是非最初に読んで欲しい本が

【キヨミズ准教授の法学入門 木村草太 著(星海新書社)】です


 普通の法学入門書よりもとても分かり易く、読みやすい本です。
 法学のことはシッカリと学べるのに、小説形式なのでとても読みやすいです。



 どうでしたか?
 法学を学ぶとはこういうことです。
 決して条文や判例を暗記することが目的の学問ではないんです。


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